和菓子屋が生き残るにはオンラインか?それともオフラインか? -高橋優太

どうも、高橋優太です。
ここ最近はオンライン戦略に関する仕事ばかり触っていたため、ふとした瞬間に触れるオフラインビジネスに、目を輝かせながら学ぼうとする自分がいます。

今回は、神奈川県平塚市にある小さな和菓子屋さんのお話をさせていただきます。

和菓子とかそんなジジくさい、ババくさい食い物はこれからの時代流行らないよ!
と思っている方も多いかもしれませんが、そんな昔ながらのお菓子でも、安定して売り上げを伸ばしているモデルもあるんです。

そこから学べることはとても多い。
そんなお話です。

安定して売り上げを伸ばす和菓子屋のヒミツ

最近オンラインでのビジネスモデルを手掛けたり研究したり、またはコンサルティングしたりしていると、自分の脳が完全に「オンラインビジネスこそ正義!」ってなってきます。
どんな相談に対しても、どんなアイディア出しにしても、何かとオンライン化を推奨してしまいがちです。

まぁ確かに、どんなビジネスモデルであっても、web戦略を取り入れることに対するデメリットよりメリットの方が圧倒的に多いと感じますし、現に時代もそう変わってきています。
決して自分のこの考えが間違っているとは思いませんが、間違っていなくても「見落とし」は非常に多いと感じます。
オンラインでのビジネスモデルを追求すればするほど、オフラインの部分は見えなくなるのです。

今回は、そんな「見落とし」に改めて触れたことで、気づくことのできたオフラインの良さみたいなのをお伝えしていければと思います。

先日、大学時代の友人と15年以上ぶりに会いました。
というか、彼の経営しているお店の近くに寄る機会があったので、せっかくなのでお店に寄ったというのが正しくはですかね。

彼とは大学のゼミで知り合いました。
私たちの受講していたゼミは起業家と後継者の育成というのがテーマでして、日常的に新規事業のピッチコンテストや地域創生のコンテストなんかを行ったり、市や民間団体が行うビジネスコンテストなんかにエントリーしたりしておりました。
彼と同じチームになったことは1度もなかったため、お互い1位を争うライバル的な存在って感じですかね。
当時からビジネスセンスは抜群で、かなり強敵だった記憶があります。

そんな彼ですが、家業が和菓子屋にもかかわらず、当時は家業を継ぐというよりは起業をすることに目が向いており、みんなが「こいつは将来何かで起業するんだろうなぁ」と思っていました。

卒業後も、風のウワサでリクルート系や通信系の会社に所属したり地元で若者コミュニティを立ち上げたりと、いつ起業してもいいような経験を積んでいる話を聞いていたので、順調に進んでいるんだと思っていたんですが、
「家業を継いだらしいぜ」という情報が入ってきた時は驚きました。

そんな彼が家業を継いで早10年。
学生時代「これからの時代はwebだ!」「トレンドを掴むんだ!」と鼻息荒くしていた彼ですが、
ここ何10年も大きなトレンドがない和菓子屋で、しかもweb戦略をほとんど取り入れずに、安定して売り上げを伸ばしています。

web戦略を取り入れて成功した3つの実例

地方の小規模店舗でも、web戦略を取り入れることで大きく成功しているモデルは多数存在します。
これから3つ、実際にあったお話を例として挙げさせていただきます。

オンライン戦略で成功したケーキ屋

地方のとあるケーキ屋の話。

今までは店頭販売100%で成り立っていたお店なんですが、安定して売り上げがあったにもかかわらず、親から子に経営が移り変わるタイミングで店舗販売を完全に辞めました。
元々100坪くらいの土地にお店と駐車場を構えていたのですが、店舗スペースを20坪くらいに縮小。製造工場とパソコン1台置けるくらいの作業スペースだけが入る小さなほったて小屋に建て直し、残りの土地は2代目社長の住居として改築しました。
販売する商品も、アイテム数を1つに絞ります。元々売れ筋No.1のチーズケーキ。そして売り方も絞ります。「いつでも食べてね!」から「プレゼント用に」。そしてサイズを大きくして金額も高価に。
時期も良かったですね。ちょうど楽天市場やyahooショッピングなどが世の中に受け入れられたタイミングくらいに出店することができたのでライバルも少ない。

結果どうなったかというと、注文が殺到し、売り上げが先代の2倍、利益が5倍に上がったといいます。

オンライン戦略で成功した農家

続いて地方の農家の話。

後継者がいなく困っていたオーナーが全国に公募をかけたところ若者夫婦が名乗り出て代を引き継ぎ。
元々の出荷先はJA一択だったのを一新し、出荷先のメインをオンラインからの受注、サブを道の駅のような物産販売所に。出荷量はほぼ変わらず売り上げを伸ばしたという事例です。

彼らの尖った点はweb戦略をインスタからのホームページへと誘導するクローズドマーケティングに絞ったこと。
SEOや広告、楽天市場やAmazonのようにライバルが多いところに出すのではなく、比較的ライバルが少なく、自分たちの世界観をダイレクトに伝え続けられるInstagramに焦点をあてたところに勝機があったという話です。

ちょっと話は逸れますが、実は農業は昨今人気職種として注目を浴びています。

従来JA一択だった業界が、C to C販売の浸透や物産販売所の増加、産地直送を謳う飲食店の増加、web戦略の参入ハードルが下がるなどの理由により、ビジネスチャンスで溢れ出したからです。
それ以外にも、都会の生活に疲れた若者が自然を求めてだったり、自給自足やスローライフというような言葉が度々トレンドになったりとする、いわゆる時代が後押ししているという理由もあるでしょうね。

上で説明した農家さんのように、尖った売り方ができればまだまだチャンスは多く存在するでしょう。

オンライン戦略で成功した飲食店

話を戻して最後の事例、コロナでダメージを受けた飲食店の話です。

コロナが流行り規制の的となってしまった飲食業。どこも苦戦を強いられていましたね。
緊急事態宣言や蔓延防止措置を繰り返していた時期を振り返ると、この時期の「勝ち組み」は要請を無視して営業していた中小規模の個人店舗でした。
新宿や渋谷、下北沢や高円寺のような飲み屋街では、20時(都の要請で営業時間が20時までとされていたため)以降に空いている店は開店から満席で、20時前後になると外に順番待ちの行列ができるほど。
「こんなクソまずい店に並んでまで飲みにいきたくない」と思いながらも、それでも行く店がなく渋々並んだ経験があります。「居酒屋難民」という言葉も流行りましたよね。

知り合いのお店でも無視する派がいくつかありましたが、経営者いわく売り上げは2倍以上だったそう。
さらに新規顧客の流入が多く、広告をかけなくても一見さんの獲得ができたということは、今後の経営にも大きくプラスになったと言います。

まぁそんな感じで、要請を無視していた店舗が売り上げを伸ばし、守っていた店舗が苦しんでいたというのは誰が見てもわかる事実です。
しかし、時短要請を守っていた店舗の中でも売り上げを伸ばしていた店舗も存在します。
厳密に言えば、コロナ前と比べては横ばいか減少しているのですが、時短営業をしているにもかかわらず売り上げが安定したお店も存在しているというお話になります。

端的に言えば、そのお店の名物料理をネット販売したという話。

その店舗は元々客単価が高めのお店で、居酒屋というよりは料亭に近い感じのお店でした。
今まで「なぜネット販売してこなかったのかな?」とも思いますが、彼らはコロナが流行ったタイミングから自社ホームページにて名物料理を売り出します。
出しているアイテムは3種類のみ。そして訴求先は常連顧客のみ。電話やDM、ハガキなどで常連客に訴求し、また来店した顧客に対しても告知。
やってることはクラファンと一緒ですね。元々常連客が多い業態だったのもあり、成功を納めたという話です。

成功モデルには共通して必ず取り入れている戦略がある

ここまでで3つのオンライン化モデルを紹介しましたが、共通して取り入れている戦略が1つだけあります。

さてなんでしょう?

Web戦略の中で彼らが取った戦略。この戦略を取り入れないと、成功を納めることができなかったとさえ言えます。

彼らが取り入れたこと。それは「ペルソナを明確に定めた」ということです。

ペルソナを定める
これはマーケティング用語でして、わかりやすく言うと
ターゲットを明確にすること
とも言い換えられます。

ケーキ屋は、どんなシチュエーションであっても、食べたい種類が明確に決まっていても、万人が満足するバリエーション豊かなケーキという、お店に通える範囲の甘いものが好きな人から、
プレゼント用に日持ちがよく、嫌いな人が比較的少ないチーズケーキに特化することで、お中元やお歳暮などでオンリーワンの商品を贈りたい層だけをターゲットとしました。

農家は、誰が作ったか分からなくても安定品質低価格の野菜を食べたいという層から、オシャレで無農薬で誰がどうやって作ったかを見たいという層にターゲットを変え、絞りました。

飲食店は、マス向けに展開ではなく、常連顧客に対するアップセルとしてオンライン販売を展開しました。

このように、どのモデルも一貫してターゲットを絞り、そのターゲットが欲しがるような訴求で顧客を獲得しているのです。
これはオンラインビジネスでは特に大事なことだと言われています。
みなさんが日常的にインターネット上で購入している商品を思い返していただくと、必ずどこかに仕掛けが入っているのに気付くかもしれませんね。

オンライン化が進む時代と逆行してオフラインで成功する秘訣

さて冒頭でお話ししました僕の友人、神奈川県平塚市にある小さな和菓子屋を継いだ彼ですが、どのようにして売り上げを伸ばしたのでしょうか。

15年ほど前、web戦略を学ぶためにリクルート系の会社や通信系の会社に席を置き、「これからの時代はwebだ!」と豪語していた彼ですが、彼はweb戦略をほぼ取り入れずに売り上げを伸ばしていました。

具体的に行ったこと。
端的に言って仕舞えばプル戦略からプッシュ戦略に変えたということ。
これだけです。

プル戦略とは待ちの戦略。
店頭にお客さんを呼び込み商品を売る戦略です。
プッシュ戦略とは攻めの戦略。
商品を欲しがっている人のもとに出向いて商品を売る戦略です。

彼が取った戦略は後者のプッシュ戦略です。
欲しがっている人のもとに出向くということは、上で説明したweb戦略で必要不可欠な「ペルソナ(ターゲット)を明確に定める」ができないと無駄足になるケースが多く、カンタンなようで難しい戦略です。

彼はweb戦略を学び、得たことをオフラインで生かし、成功を納めているわけですね。
これに気づいた時には、さすが!としか言えませんでした。

web戦略で学んだことはwebの世界で生かす。
オフラインで学んだことはオフラインの世界で生かす。
これが当たり前のようになっていますし、パッと連想するとその方程式でやろうとしてしまいがちになります。

このように、フィールドの垣根を超えた成功体験の共有が新たなビジネスやアイディアを生むということ。

実はこの考えこそが最も大事なことで、常に頭に入れなくてはいけないことなのかもしれません。

平塚にある老舗和菓子屋「杵若」

今回紹介した友人が経営している和菓子屋はこちら。
https://www.kinewaka.com/

店舗でも購入可能ですが、以下のお店でも購入可能です。

Aコープ平塚旭店
あさつゆ広場
Gooz平塚パーキングエリア
Aコープ伊勢原高森店
わくわく広場伊勢原店
海老名SA
湘南ひらつかふれあいマーケット
サンサンマルシェ

※季節や時間帯によっては置いてない可能性もありますので、お求めの場合は店舗にお問い合わせください。

個人的なオススメはカルピスバターどら焼き

口に含んだ瞬間、絶妙な甘さが口の中に広がり、咀嚼するたびに食感と共に現れるほのかに塩気の効いたカルピスバターがいい仕事をしてくれます。
お近くの方はぜひご賞味あれ。