その世界、下から見るか?横から見るか? -高橋優太

どうも、高橋優太です。

先日ビジネスパートナーから「最近生活保護受給者やホームレスと一緒に酒を飲んでいる」というカミングアウトを受けました。
彼とホームレスが横に並んで酒を酌み交わす姿を想像しても、見た目、考え方、そもそもの彼が持つオーラなど、全てにおいてかけ離れた存在であり違和感しか感じません。

なぜ彼がそのような行動を取ったのか?
今回は、その世界、下から見るか?横から見るか?というお話をさせていただきます。

若手経営者のオーラを身に纏った彼

先日、ビジネスパートナーと打ち合わせをしていました。
彼とは3〜4年に渡りお付き合いがありますが、継続してというよりプロジェクト単位で集まり、一緒に仕事をする間柄ですので、この日は約半年ぶりにお会いしたタイミングでした。

久しぶりということもあり、お互いのプライベートやビジネスに関しての近況報告で盛り上がったのですが、ある話題の延長で彼がとても面白い発言をしました。

「最近ホームレスや生活保護受給者と一緒に飲んでるんですよね」

と。
彼はたまにぶっ飛んだ発言をするので、心臓が飛び出るほど驚いたわけではありませんが、その行動にどんな目的があるのかとても興味が湧きました。
まさか彼自身がそのレベルにまで収入が落ちたとは1mmも想像しないままに・・・

少し彼のバックボーンをお話ししますと、元々は兵庫県尼崎市で生まれ、様々な職種を渡り歩き、最終的にはクリエイティブ系の業界に落ち着きます。
現在は動画制作やデザイン関係の会社を経営する傍ら、トレンドであるメタバース業界やNFT業界に目をつけ、デザイナーの育成、教育を行なっています。
見た目は「美容関係の人かな?」と思えるような雰囲気で、少し会話を取り交わせば、話し方や話す内容、思想などから、若手経営者のオーラを感じることができます。

ここまでお話ししたイメージの彼の隣に、身なりは小汚く、髪の毛はハゲ散らかし、垢が固まりゾウの皮膚のような皮膚感の茶色い肌、半径1m以内に近づけば嗅覚からその存在を感じられるような強烈なにおい。そんなイメージの中年男性が彼のとなりに立っていたら?

方や青年実業家、方やホームレス。
そんな2人が肩を並べ、お酒を飲んでいる姿を想像すればするほど違和感しか感じません。

経営者と従業員のそれとも違い、親子でもないし、友人でもなし。
全く接点が感じられない違和感の塊。
そんな光景が現実に存在するというのです。

地元に貢献する自分なりのカタチ

始めに申し上げておくと、彼自身がホームレスになったわけではなく、生活保護を受給しているわけでもありません。
あくまでも「ビジネスの一環」として飲んでいるんだという前提があります。

よかった。そこまで落ちてしまっていたわけではなく、本当によかった。

さて、その彼はなぜその行動を取っているかと言うと、事の発端は地域貢献というキーワードからの発想だったそうです。

私としばらく連絡を取っていなかった期間、彼は帰省をしました。
そしてしばらく地元の空気を吸っているうちに、生まれ育った街に対して何かしらの貢献を行いたいという気持ちが芽生えたそうです。

自分に何ができるか?
これまで自分がやってきたことを地元に置き換えて考えれば、美容室やら写真館、工務店のような空間デザインの会社、プロモーション関連の会社など、パッと思い浮かべるだけでも複数思い付きます。
でもそれらはすでに地元に存在し、後発で出店したとしたら出来上がっている生態系を壊すことになる

自分だからできること、自分しかできないことを考えて悩み続けた結果、気づいたら地元商店街にある立ち飲み屋でビールを飲んでいたそうです。

毎日毎日、昼間から商店街の立ち飲み屋でお酒を飲んでいるうちに、その街で昼間に飲み歩いている全ての常連客と顔見知りになったといいます。

昼間から酒を飲むような人種は、既に子供の代までの資産を築き上げた人生上がりきった富裕層か、仕事をしていない無職かの2択です。
さらに田舎の寂れた商店街で、毎日同じ服を着て、ビール1杯〜2杯で数時間粘っているような人種なんか、ホームレスや生活保護受給者しかいないと相場は決まっています

事実、その街で昼間から飲み歩きながら築き上げた人脈は全て生活保護受給者かホームレスだったそうです。

彼の言う「地域貢献」は、もちろん昼間からお酒を飲んで街にお金を落とすという行為ではありません。
この毎日通って築いた人脈こそが、後に地域に大きく貢献するための種となると言うのです。

底なしの沼には飛び込めない

日本のことわざに「郷には従え」という言葉があります。

アッパー層に向けたビジネスをするのであればアッパー層のことを知らなければ成功はなし。
大衆向けにビジネスをするのであれば大衆の心理を理解しなければ成功はなし。
ということです。

ここで言う「大衆」ですが、その辺のカフェでお茶しているような若者や市内で企業勤をしているサラリーマンやOLなんかを指しますが、この属性の心理は誰でもある程度理解できます。
それは現在自分自身がその「大衆」と同じポジションにいる、または現在はその上のレイヤーに属していたとしても過去では必ず「大衆」の中の1人にいた経験を持っているはずですし、なんならその当時の友人・知人の多くは未だに「大衆」だったりするからです。

でもそれは本当の意味での大衆ではなく、本当の意味での大衆を突き詰めていくと、自分が理解できない領域が出てくるのです。
それが彼の場合は生活保護受給者やホームレスという属性だった、ということです。

各市区町村を生活保護受給者が多い順に並べて見ると、日本で最も生活保護受給者が多いのは大阪市、そしてその次に多いのは札幌市です。次に第3位で横浜市、第4位で神戸市と続き、兵庫県尼崎市は日本で上から数えて19番目に生活保護受給者が多い街になります。
人数にすると生活保護受給者だけで2万人。未知数のホームレスや無職を入れるとかなりの数になります。

生活保護受給者の人口が19番目に多いとしても、総面積約50㎢の中に46万人弱が暮らしていれば、2万人〜3万人という数字はかなり目立つ存在です。
このかなり目立つ存在を切り捨ててしまえば、本当の意味での大衆ではなく、本当の意味での地域貢献はできません。
「大衆」に属する最下層部のことを本当に知ることができて、初めて大衆向けビジネスを展開することができるようになる。彼はこのように考えていたのです。

最高のアンサーは相手になりきらないと出てこない

よく推理小説などで、主人公が
「もし自分が犯人(敵)だったら・・・」
と、相手の気持ちになって想像していくシーンがあります。
これはプロファイリングという分析方法で、実際によく警察官が犯人を分析、特定するために使われます。

まぁ常人にはそんな能力はありませんので、もし相手の心理を理解したい場合には、自分自身が全く同じ体験をするか、その体験をした人に細かく聞くかのどちらかになります。

相手になりきるという行為は、ビジネスやスポーツ、教育などのシーンでもよく使われます。
しかしどのシーンであっても、必ず自分自身が同じ体験をしているか、その体験をした人から話を聞いたか、このどちらかが無いと想像することすらできません。

相手の気持ちを理解して、初めてその人が欲しがっている言葉、商品が見えてくるのです。

沼の底を見た結果、その時何が見えた?

そんなこんなで、しばらくの間、生活保護受給者やホームレスと毎日お酒を飲んでいた彼ですが、結果的に分かったことや気づき、発見などについて、とても気になるところかと思います。

自分も同じです。

そう、その答えは教えてくれなかったのです。

ケチ!
本当にケチ!!!
そこまで引っ張っておいて!!!!

と、そう思ったあなたと同じく、私も今全く同じ気持ちです
まぁ、でも言わない理由も理解できてしまうんですよね。

ビジネスの種は闇雲に言うものでは無い

その日も新橋のカフェで打ち合わせをしており、周りには沢山のビジネスマンがいます。
またこの話を聞いていた私の周りには、沢山の経営者がいます。

100歩譲ったとしても、自分が彼のアイディアをパクり、彼よりもテンポ良く形にし、兵庫県尼崎市でリリースしてしまうことはあり得ません。
しかし自分がやらなくとも、誰がどこで聞いているかわからないということです。

まぁそれだけ衝撃的な発見があったんでしょうね。

またいつの日か、形になった際には共有していただけると思います。それまでは皆さんと一緒に、楽しみに待つことにしたいと思います。

その世界を下から見るか、横から見るか。
自分が想像もできないようなことは、見る角度を変えるだけでカンタンに見ることができたりします。

その角度を変えるという発想と行動は、実はカンタンそうに見えて難しいことなのかもしれません。